NISAの成長投資枠で個別株を買えると知ると、次に迷うのは「何銘柄まで持てばいいのか」ですよね。1社だけだと怖い。10社なら分散できている気がする。高配当株、優待株、大型株、米国株と、買いたくなる入口がスマホの画面にいくつも並びます。でも、最初に決めるのは銘柄数ではありません。先に決めるのは「1社の重さ」です。
- 個別株は銘柄数より先に1社の重さを決めること
- 国内株の最低投資額は株価×100株で見ること
- 10銘柄あっても同じ業種・テーマなら分散とは言い切れない理由
- NISAの非課税は損失を救済しないという前提
まず結論からいきます。
初心者にとって、個別株の正解の銘柄数は決められません。3銘柄が少なすぎる人もいれば、3銘柄でも管理しきれない人もいます。
10銘柄あっても、全部が同じ業種や同じテーマなら、見た目ほど分散できていないこともあります。逆に銘柄数が少なくても、1社あたりの金額が小さく、決算を読めていて、使う時期も遠いなら、家計への影響は抑えやすくなります。
だから先に決めたいのは、銘柄数ではなく1社の重さです。1社に何万円まで入れるのか、NISA枠全体の何割までにするのか。ここを決めずに銘柄だけ増やすと、分散しているつもりで、同じリスクを何枚も重ねているだけになりがちです。

1社だけだと怖いので、とりあえず10社くらいに分けておけば分散になりますよね?
その気持ちはよくわかります。でも10社あっても、全部が同じ業種や同じテーマだと、見た目ほど分散できていないんです。先に決めたいのは銘柄数ではなく、1社あたりの重さですよ。
この記事では、具体的な銘柄選び、配当や優待、証券会社、売買タイミングは扱いません。やることは1つ、NISAで個別株を買う前に、銘柄数ではなく集中リスクの上限を作ることです。
先に結論:何銘柄が正解かは固定しない
この記事の結論は、少しつまらなく見えるかもしれません。個別株の正解銘柄数は、初心者にとって一つに固定できないからです。大事なのは数ではなく、1社あたりどれだけ背負うかです。
最初に作るのは、この5つです。
保存用:個別株を買う前の5つの上限メモ
| 決めること | 書くメモ | 止めたい失敗 |
|---|---|---|
| 1社の重さ | 1社あたり何万円、NISA枠の何割まで | 気に入った1社へ寄りすぎる |
| 同じ業種の上限 | 銀行、半導体、商社など同じ箱を何社までにするか | 銘柄数だけ増えて中身が同じになる |
| 読める数 | 決算やIRを追う会社を何社までにするか | 分散ではなく放置になる |
| 使う時期 | 5年以内に使うお金を混ぜていないか | 下落時に売らされる |
| 損失時ルール | NISAの損失は損益通算できない前提で見る | 非課税だけ見て損失時の扱いを忘れる |
この表が空欄のままなら、個別株を探す前にいったん止まりましょう。
NISAの対象商品そのものを確認したいなら、先にNISA対象商品リストの読み方へ戻ります。ETFや投資信託との違いで迷っているなら、ETFと投資信託の比較を先に見ておくと整理しやすいですよ。
💰 1社の重さは、株価ではなく「株価×100株」で見る
個別株を見るとき、初心者が最初に注目しやすいのは株価です。1株1,000円なら安く見えて、1株5,000円なら高く見えますよね。
でも、国内上場株式を東証で買うときは、原則として売買単位があります。JPXは、東証の内国株について100株単位で取引されていると説明しています。
つまり、株価だけを見ても、最初に必要な金額は見えません。
見るのは株価そのものではなく、株価 × 100株です。1株1,000円でも、100株なら10万円。株価の高い・安いより、実際に必要になる金額でNISA枠と家計への重さを見ましょう。

同じ「1銘柄」でも、必要な金額は大きく変わります。この記事では具体的な銘柄名を出しませんが、考え方はシンプルです。
保存用:1銘柄の重さを見る式
| 見る場所 | 確認すること | メモの例 |
|---|---|---|
| 株価 | 1株あたりの値段 | 株価だけで判断しない |
| 売買単位 | 何株単位で買うか | 国内株なら100株単位を確認 |
| 最低投資額 | 株価に売買単位をかけた金額 | NISA枠と家計に占める割合を見る |
| 余裕資金 | なくなっても生活が崩れないお金か | 生活費、税金、教育費、返済と分ける |
JPXは、個人投資家が投資しやすい環境を整備する文脈で、望ましい投資単位として50万円未満という水準も示しています。ただし、ここは読み間違えないようにしたいところです。
50万円未満なら誰にでも合う、という意味ではありません。
見るべきなのは、自分の家計でその金額がどれくらい重いかです。10万円でも重い家計があります。50万円でも余裕資金の一部に収まる家計があります。NISAの枠があるから入れるのではなく、家計の中でどの箱のお金なのかを先に分けましょう。
金融庁の資産形成の基本でも、家計管理やライフプランニングを土台にしたうえで、長期・積立・分散を考える流れが示されています。個別株を買う前も同じで、銘柄探しより先に、お金の置き場所を分けます。
10銘柄あっても、同じ業種なら分散とは言い切れない
「1社だけは怖いから、10社くらい持てばいい」——この考え方は、入口としては自然です。1社に全部を寄せるより、複数の会社に分けたほうが、1社の業績悪化の影響は小さくなりやすいですよね。
ただし、銘柄数だけでは足りません。
10銘柄あっても、全部が同じ業種なら、その業種に大きく寄っています。全部が同じテーマなら、同じニュースでまとめて動きやすくなります。全部が円資産なら、通貨の分散はありません。外国株だけなら、為替や国・地域のリスクも見ます。
日本証券業協会/J-FLECは、株式投資のリスクとして価格変動リスクや信用リスクを挙げています。外国株式の場合には、為替変動リスクやカントリーリスクも加わります。そのうえで、買うタイミングを分けたり、複数の会社や業種に分散したり、短期ではなく長期的な成長に期待したりする考え方を示しています。
ここで大切なのは、分散を銘柄数だけにしないことです。

たとえば、次のように一段深く見ます。
| 見た目 | もう一段見ること | ありがちな誤解 |
|---|---|---|
| 5銘柄持っている | 同じ業種に偏っていないか | 5社なら分散できている |
| 高配当株を複数持っている | 配当方針、業績、減配リスクが似ていないか | 高配当なら守りになる |
| 大型株を複数持っている | 同じ景気要因や為替で動かないか | 大企業なら落ちにくい |
| 米国株を複数持っている | 為替、国、セクターの偏り | 米国株なら十分分散 |
| ETFや投信も持っている | その中に同じ会社や同じ国が入っていないか | 別商品なら重ならない |
この表で止めたいのは、「数を増やしたから大丈夫」という思い込みです。
個別株が3銘柄でも、業種が分かれていて、金額が小さく、資料を読めているなら、管理できている可能性があります。反対に10銘柄でも、同じテーマに寄っていて、下がった理由を説明できないなら、見た目より集中しているかもしれません。
日本株ETFや投資信託との重なりも同じです。日本株ETFをNISAに入れる意味では、制度、指数、商品を分けました。個別株でも、同じ会社や同じ業種を二重に持っていないかを見ます。
配当目的で個別株を見るなら、銘柄数の次に高配当株をNISAで見る前の減配と受取方式へ進みます。配当利回りの数字だけでなく、非課税、減配、配当金の受け取り方、使う時期を別の箱にします。受け取り方だけで迷ったら、NISA配当金の株式数比例配分方式チェックで、証券口座、銀行口座、紙での受け取りを分けます。
個別株は「買った後に読む量」が増える
個別株の難しさは、買うときだけではありません。買った後に、読む量が増えます。
決算短信、決算説明資料、適時開示、配当方針、業績予想の修正、中期経営計画、事業環境の変化。全部を専門家のように読む必要はありませんが、少なくとも自分がなぜその会社を持っているのかを言える状態にはしておきたいですよね。
ここで、銘柄数の上限が出てきます。それが「読める数」です。
仕事や家事や育児がある中で、決算シーズンに10社分の資料を見られるのか。業績が悪化したとき、なぜ悪化したのかを確認できるのか。配当が変わったとき、表面の利回りだけでなく会社の利益や方針を見られるのか。
そこを無視して銘柄数だけ増やすと、分散ではなく、見ていない会社を増やしているだけになります。

買う前に、次の4行を書いてみましょう。
保存用:買う前4行メモ
| 行 | 書くこと | 書けない時の意味 |
|---|---|---|
| 1 | なぜ買う? | SNSや話題の印象だけかもしれない |
| 2 | 何円まで? | 1社の重さが決まっていない |
| 3 | 何を見る? | 決算、配当、業績、資料の確認先が曖昧 |
| 4 | いつ使う? | 近い将来に使うお金を混ぜている可能性がある |
この4行は、売買の答えではありません。買う前に立ち止まるためのメモです。書けるならそのまま買ってよい、という意味でもありません。書けないなら、少なくとも今は情報が足りない、というサインです。
J-FLECの投資の心構えでは、心、時間、資金の余裕があるかという視点が示されています。個別株は、特に時間の余裕が大切です。買った後に何を見るかを決めずに増やすと、値動きだけを見て判断しやすくなります。
NISAの非課税は、損失の救済ではない
個別株をNISAで買うとき、非課税のメリットだけを見るのは危険です。
NISAは、対象となる上場株式等の配当や売却益が非課税になる制度です。国税庁のNISA制度ページでは、成長投資枠の年間投資上限額や非課税保有限度額も説明されています。
一方で同じページでは、NISAで取得した上場株式等を売却して生じた損失はないものとみなされることも説明されています。つまり、その損失をほかの上場株式等の配当や譲渡益と損益通算したり、繰越控除したりできません。
利益が出たときの非課税と、損失が出たときの扱いは、同じ明るさで見てください。NISA口座の売却損は、課税口座の利益と損益通算できず、繰越控除もできません。「NISAなら損しても非課税だからいい」という読み方はしないようにしましょう。
たとえば、次のように整理します。
| 起きたこと | NISAで見えること | 注意すること |
|---|---|---|
| 配当や売却益が出る | 制度上、非課税の対象になり得る | 受取方式や制度条件は公式情報で確認する |
| 売却損が出る | 損失はないものとみなされる | 課税口座の利益と損益通算できない |
| 含み損が出る | 評価額は下がる | NISA制度が値動きを消すわけではない |
| 途中で売る | 家計上の現金化はできる | 枠の扱い、再利用、税務扱いは制度情報へ戻る |
非課税は、利益が出たときの税金の話です。値下がりを防ぐ話でも、損失時の税務扱いを軽くする話でもありません。個別株は、会社ごとの業績、信用、価格変動を受けます。だからNISAに入れる前ほど、1社の重さを先に決めます。
評価額がマイナスになったときの見方は、NISAの評価額がマイナスになった時の家計メモでも整理しています。損失そのものではなく、使う時期、家計、商品、制度を分けます。NISA口座の損失と課税口座の制度をもう少し細かく分けるなら、NISAで損した時の損益通算チェックで、損益通算、繰越控除、売る前4行メモを確認します。
📝 迷ったら、銘柄数ではなく「上限メモ」を作る
最後に、この記事の実用部分だけを残します。個別株をNISAで買うなら、何銘柄までか。その答えを、この記事では固定しません。
代わりに、買う前にこの上限メモを書きます。
保存用:個別株NISAの上限メモ
- 1社あたり、NISA枠の何割までにするか。
- 同じ業種や同じテーマを、何社までにするか。
- 決算やIRを読み続ける会社を、何社までにするか。
- 5年以内に使うお金を、個別株に入れていないか。
- NISA内の損失は、損益通算や繰越控除に使えない前提を見たか。
この5つが書けると、銘柄数の意味が変わります。「何銘柄が正解か」ではなく、「自分が管理できる範囲か」に変わります。
逆に5つが空欄のままなら、銘柄数を決めてもまだ早いです。1社だけにするか、5社にするか、10社にするかの前に、何をどこまで背負うのかが見えていません。
結局、何銘柄がいいのか教えてほしかったんですが……。
気持ちはわかります。でも同じ「5銘柄」でも、家計や読める量によって重さはまるで違うんです。だから数を決める前に、まずこの5行を埋めてみてください。ここで焦らなくても大丈夫ですよ。
NISAの成長投資枠で個別株を買えることと、いま個別株を買う必要があることは別です。ETFや投資信託から見る選択肢も、現金の箱を厚くする選択肢も、NISAを使わず先に生活防衛資金や固定費を整える選択肢もあります。
もしこの5つのうち、家計や使う時期で止まったら、投資リスク自己診断へ進みます。銘柄名を探すより先に、家計、商品リスク、下落時の行動、NISA制度、SNSや広告の影響を分けます。
まとめ:銘柄数ではなく「1社の重さ」から決める
- 個別株の正解銘柄数は固定できない。先に決めるのは1社の重さ(1社あたりの金額、NISA枠の何割か)
- 国内株の最低投資額は株価×100株で見る。JPXは望ましい投資単位として50万円未満も示している
- 10銘柄でも同じ業種・テーマなら分散とは言い切れない。中身の重なりを数える
- 買う前に4行メモ(なぜ買う/何円まで/何を見る/いつ使う)を書く
- NISA内の損失は損益通算・繰越控除に使えない。非課税は損失の救済ではない
個別株をNISAで買う前に、銘柄名を探すより先に上限メモを作ります。1社の重さ、同じ業種の重なり、読める数、使う時期、損失時の扱い。この5つが空欄なら、まだ銘柄数を決める段階ではありません。
NISAで個別株を買えることは事実です。ただし、買えることと、いまの家計で背負えることは違います。まずは1社の重さを見えるようにしてから進みましょうね。
事実・確認ポイント・変わりうる点
| 区分 | この記事での扱い |
|---|---|
| 事実 | 金融庁はNISA制度と資産形成の基本を公開している。国税庁はNISA制度、成長投資枠、損失時の損益通算/繰越控除不可を説明している。JPXは東証の内国株が100株単位で取引されていること、望ましい投資単位の水準を説明している。日本証券業協会/J-FLECは株式投資の主なリスクと分散の考え方を説明している。 |
| 確認ポイント | 個別株をNISAで見る前に、1社の重さ、業種の重なり、読める数、使う時期、損失時の扱いをメモする。 |
| 変わりうる点 | 何銘柄が多いか、少ないか、今後どの株価が上がるかは、読者の家計、経験、保有商品、市場環境で変わる。本記事では断定しない。 |