「オルカンを買った」「S&P500にした」。そこまでは決められたのに、月報を開いた瞬間に手が止まる。基準日、純資産総額、組入上位銘柄、国・地域、通貨、騰落率、分配金。文字は読めるのに、どこから見ればいいか分からない。ここで見るのは、次に買うか売るかではありません。自分が何を持っているかです。

投資信託の月報は、難しい資料に見えます。

でも、最初から全部を読もうとしなくて大丈夫です。

この記事では、月報を5つの箱に分けます。

1つ目は、基準日です。

2つ目は、国・地域と通貨です。

3つ目は、上位銘柄と業種です。

4つ目は、純資産総額です。

5つ目は、費用、分配金、次の確認日です。

ここでやらないことも、先に決めます。

月報を見て「この商品がよい」「この比率ならすぐ変更」とは言いません。月報は、将来の成績を当てる紙ではありません。持っている箱の中身を、前より少し自分の言葉で説明できるようにする紙です。

三菱UFJアセットマネジメントのeMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)とeMAXIS Slim米国株式(S&P500)の公式商品ページでは、最新の月報、交付目論見書、運用報告書、月次レポートの見方への導線を確認できます。金融庁のつみたて投資枠対象商品ページでは、対象商品の一覧が公開されています。

つまり、商品名で止まらず、公式の資料へ戻る道は用意されています。

ただし、その道に入ったあとで迷いやすい。

だから、月報を読む順番を小さくします。

せかい先生が黒板で月報を5つの箱に分けて説明する図解
月報は、買う紙ではなく確認する紙です。まず5つの箱に分けると、読む順番が見えます。

先に結論:月報は5つの箱で読む

月報を開いたら、最初に見る順番はこれです。

保存用:月報で最初に見る5つ

順番見る箱見る理由そこで止まると起きる誤解
1基準日いつ時点の資料かを確認するSNSやニュースの日付と混ざる
2国・通貨どこの企業とどの通貨の影響を受けるか見る円で買うから円だけで動くと思う
3上位銘柄・業種有名企業の名前ではなく、集中度を見る知っている会社が多いから安心と読む
4純資産総額箱の大きさと増減を見る大きければ何も見なくてよいと思う
5費用・分配・次回確認持ち続ける時の確認点を残す月報を見ただけで判断が終わる

月報は、1回読んで終わりの資料ではありません。

毎月、または気になった時に戻ってきて、同じ場所を見るための資料です。

子ども向けに言えば、月報は「箱の中を見せてくれる写真」です。写真を見たからといって、明日その箱が大きくなるか小さくなるかは分かりません。でも、箱の中に何が入っているかは、少し分かります。

投資信託で大切なのは、この少し分かる状態を積み上げることです。

「全世界株式」と聞く。

「S&P500」と聞く。

「低コスト」と聞く。

「NISA対象」と聞く。

どれも入口です。月報では、その入口の下にある中身を見ます。

1. まず基準日を見る

月報で最初に見るのは、成績ではありません。

基準日です。

月報は、ある時点の資料です。たとえば、月末時点、または特定の基準日時点で、基準価額、純資産総額、組入銘柄、比率、騰落率などをまとめています。ここを見ないまま読むと、今見ているニュース、SNS投稿、株価チャート、為替の動きと混ざります。

「今日SNSで見た下落」と「月報に載っている前月末の情報」は、同じ時点とは限りません。

このズレが、初心者にはかなり大きいです。

たとえば、ニュースでは米国株が下がったと話題になっている。そこで月報を見る。月報には前月末の上位銘柄や国別比率が載っている。ここで、今の下落をそのまま月報の数字へ重ねると、読む場所がずれます。

月報は、速報ではありません。

確認資料です。

だから、最初に書くメモはこれです。

保存用:月報を開いた最初の3行メモ

メモ欄書くこと意味
資料名どの投資信託の月報か似た名前の商品と混ぜない
基準日何月何日時点か現在の相場と混ぜない
確認日自分が見た日あとで見返す時の足場にする

基準日は、地味です。

でも、ここを飛ばすと、月報が急に占いの紙になります。

本来は、過去のある時点の箱の写真です。今この瞬間の値動きでも、将来の予告でもありません。まず時点を固定すると、読み方が落ち着きます。

2. 国・地域と通貨を見る

次に見るのは、国・地域と通貨です。

オルカンS&P500の記事でも整理した通り、商品名だけでは中身は分かりません。

全世界株式と聞くと、世界中に同じ量ずつ投資しているように感じるかもしれません。でも、指数や商品によって、国や地域の比率は変わります。S&P500と聞くと、米国の代表的な大型株の箱だと分かりますが、それでも上位銘柄や業種の偏りは見ます。

さらに、国・地域と通貨は同じではありません。

ここが、月報でつまずきやすいところです。

日本円で投資信託を買っているから、円だけで動く。

そうは言えません。

海外株式に投資する投資信託なら、投資先企業の国・地域、表示通貨、為替の影響、為替ヘッジの有無などを分けて見ます。商品ページや月報、交付目論見書では、それぞれの見せ方があります。

ここでも、判断を急ぎません。

米国比率が高いから良い。

米国比率が高いから悪い。

そういう話にはしません。

見るのは、自分の箱がどこに寄っているかです。

せかい先生が黒板で国と通貨は別の箱だと説明する図解
国・地域と通貨は関係しますが、同じ箱ではありません。円で買っても、海外資産の影響は残ります。

幼稚園児に説明するなら、こうです。

おもちゃの会社がどこの国にあるか。

そのおもちゃの値段が、どのお金のルールで動きやすいか。

この2つは、似ています。

でも同じではありません。

地図を見る箱と、お金のマークを見る箱を分けます。

月報で見る時は、次のようにメモします。

保存用:国・通貨を見る時のメモ

見る欄読めること自分用メモ
国・地域別比率どの地域の企業が多いか思っていたより偏っている地域はあるか
通貨別比率どの通貨の影響を受けやすいか円高・円安で家計がどう感じるか
為替ヘッジ為替変動をどの程度抑える設計か目論見書で有無と方針を確認する

この表は、正解を出すためではありません。

自分の想像と、月報の中身を合わせるためです。

「全世界」と思っていたけれど、特定地域の影響が大きい。

「円で積み立てている」と思っていたけれど、海外資産の動きも強く出る。

こういう発見があったら、それだけで月報を開いた意味があります。

3. 上位銘柄と業種を見る

次は、上位銘柄と業種です。

ここは、つい有名企業リストとして見てしまいます。

名前を知っている会社が並んでいる。

よく聞く企業が入っている。

それだけで、何となく分かった気になります。

でも、月報で見るのは、有名かどうかではありません。

集中度です。

上位10社が全体のどれくらいを占めているか。特定の業種が大きくなっていないか。ある国や地域の影響と重なっていないか。月報では、こうした偏りをメモします。

ここでも、銘柄名を投資判断にしません。

たとえば、上位に知っている会社があったとしても、それだけで商品内容を理解したことにはなりません。反対に、知らない会社が多いから悪いとも言えません。

見るのは、上のほうの積み木が、箱全体にどれくらい効いているかです。

せかい先生が黒板で上位銘柄は集中度を見ると説明する図解
上位銘柄は、有名さを見るだけで止めません。名前、比率、偏りを順番に見ます。

積み木で考えます。

大きな箱の中に、たくさんの積み木が入っています。

上のほうに大きな積み木がいくつかあります。

その積み木が動くと、箱全体も少し動きやすくなります。

これが、上位銘柄を見る感覚です。

月報では、次の3つを分けます。

保存用:上位銘柄を見る3ステップ

  1. 名前を見る。知っている会社かどうかではなく、何の会社かを確認する。
  2. 比率を見る。上位の会社が全体にどれくらい効いているかを見る。
  3. 偏りを書く。業種、国、通貨と重なっている偏りをメモする。

ここで、月報はとても役に立ちます。

商品名だけでは、「上位に何が入っているか」は見えません。

SNSの短い投稿だけでは、上位銘柄の入れ替わりや比率までは追いにくいです。

月報は、商品を売り込むためだけの紙ではありません。少なくとも、自分が持っている箱の中身を確認する入口になります。

ただし、ここでも行動は急ぎません。

上位銘柄を見て「この会社が好きだから続ける」「この会社が入っているからやめる」と短く決めると、また商品名だけで判断する状態に戻ります。

上位銘柄は、偏りを見つける場所です。

売買ボタンを押す場所ではありません。

4. 純資産総額、費用、分配方針を見る

国、通貨、上位銘柄を見たら、次は商品としての続きやすさを見ます。

ここで見るのは、純資産総額、費用、分配方針です。

純資産総額は、箱の大きさです。

ただし、大きいから何も見なくてよい、小さいからすぐ避ける、とはしません。すでに整理した純資産総額の記事と同じで、大きさ、増減、設定日、信託期間、繰上償還条件を分けます。

費用は、信託報酬だけで終わらせません。

月報では費用の細かい明細が全部載らないこともあります。だから、月報を入口にして、実質コストや運用報告書へつなげます。買う前は目論見書、買った後は運用報告書。この2つを混ぜないようにします。

分配方針も見ます。

分配金がある商品なのか。分配方針はどう書かれているのか。受取や再投資の扱いはどこで確認するのか。ここは、分配金あり投信の記事分配金再投資の記事へ戻る場所です。

月報だけで全部を終わらせない。

これも大事です。

月報は、資料の入口です。

必要なら、目論見書、運用報告書、商品ページ、金融庁の対象商品ページへ戻ります。

保存用:月報から別資料へ戻る表

気になったこと月報で見る場所次に戻る資料
箱の大きさが気になる純資産総額、資金流出入、基準価額推移商品ページ、目論見書、運用報告書
費用が気になる信託報酬、費用関連の注記目論見書、運用報告書
分配金が気になる分配実績、分配方針の説明目論見書、販売会社のコース説明
NISA対象か気になる商品ページの表示だけで止めない金融庁の対象商品一覧

月報で一番もったいない読み方は、数字を見て終わることです。

基準価額が上がった。

純資産総額が増えた。

上位銘柄が入れ替わった。

その事実だけを眺めて終わると、次に何を確認するかが残りません。

月報を読む目的は、気になった点を次の資料へつなぐことです。

5. 最後は次の確認日へつなぐ

月報を読んだあとに、いちばん現実的な行動があります。

次の確認日を決めることです。

これは地味ですが、かなり効きます。

投資信託は、毎日ニュースを見て不安になるものではありません。かといって、一度買ったら資料を見なくてよいものでもありません。

月報を見る日を決める。

確認する欄を決める。

メモの形式を決める。

これだけで、SNSの見出しに引っ張られにくくなります。

せかい先生が黒板で月報を読んでメモして次回確認日へつなぐ図解
月報を読んだら、次回確認日を残します。見っぱなしにしないことが、続けるための足場になります。

ここで、保存用の最後の表を作ります。

保存用:月報を読んだ後の8行メモ

項目書くこと
1. 商品名正式名称を書く。愛称だけで終わらせない。
2. 月報の基準日何月何日時点の資料か。
3. 国・地域思っていたより大きい地域、小さい地域を書く。
4. 通貨円以外の影響を受けるか、為替ヘッジの有無を確認する。
5. 上位銘柄/業種名前、比率、偏りを短く書く。
6. 純資産総額大きさだけでなく、増減と設定日を見る。
7. 費用/分配信託報酬、運用報告書、分配方針へ戻る点を書く。
8. 次の確認日次に月報を見る日を決める。

この8行を埋めても、投資判断がすべて終わるわけではありません。

でも、少なくとも「何となく持っている」からは一歩進みます。

月報を読む目的は、賢そうな言葉を増やすことではありません。

自分の箱の中身を、家計と時間軸に戻すことです。

今月の月報を見て、積立額が不安になったら、商品を変える前に月次お金レビューへ戻ります。評価額の赤い数字が気になるなら、売買の前に投資リスク自己診断へ戻ります。

ETFと投資信託の資料の違いで迷う場合は、ETFと投資信託の5箱比較へ戻します。月報は投資信託の定点観測であり、ETFではJPXや発行会社の情報も確認します。

月報で国・通貨・上位銘柄を見たあと、日本株ETFを別で持つ意味が気になる場合は、日本株ETFを制度、指数、商品に分ける記事へ戻します。月報で見た中身と、ETFで足す中身を重ねて確認します。

月報は、行動を急がせる紙ではありません。

確認を続けるための紙です。

よくある読み間違い

月報で起きやすい読み間違いを、ここでまとめます。

保存用:月報でやりがちな読み間違い

見たものやりがちな読み方戻す読み方
騰落率今後も同じ方向に動くと思う過去の一定期間の結果として読む
国別比率多い国ほど良い/少ない国ほど悪いと読む自分の偏りとしてメモする
上位銘柄有名企業があるから安心と読む比率と集中度を見る
純資産総額大きさだけで判断する増減、設定日、信託期間、条件を見る
NISA対象表示対象なら商品確認は終わりと思う対象確認と商品理解を分ける

この表で伝えたいのは、月報を怖がる必要はないということです。

ただし、月報を1つの数字だけで読まない。

騰落率だけ。

上位銘柄だけ。

純資産総額だけ。

低コストだけ。

NISA対象だけ。

どれか1つで終わると、また「名前で買う」に戻ってしまいます。

月報は、複数の箱を一緒に見るための資料です。

Fact / Guidance / Speculation

Fact / Guidance / Speculation

区分この記事での扱い
Fact運用会社の商品ページには、月報、目論見書、運用報告書、月次レポートの見方への導線が用意されている。金融庁はつみたて投資枠対象商品の一覧を公開している。
Guidance月報を見る時は、基準日、国・通貨、上位銘柄・業種、純資産総額、費用・分配、次回確認日の順に小さく読む。
Speculation月報の数字から、今後のリターン、為替、上位銘柄の値動き、商品間の勝ち負けは予測しない。

最後に、月報を読む時の結論を1つに絞ります。

月報は、投資信託の点数表ではありません。

自分が持っている箱の中身を、同じ順番で確認するための紙です。

商品名で安心したくなったら、基準日、国・通貨、上位銘柄、純資産、費用・分配へ戻る。

その5つを書けたら、次回確認日を決める。

これで十分、次の一歩になります。